研究概要 |
本研究の目的は,現在の色表示機器では,測色器により色度を等しくしても,色の見えが必ずしも一致しないという大きな問題に対し,その原因を人間の色覚特性,中でも等色関数が個人によって違うと考え,等色関数の高精度な測定により解明を目指すことである.そのために等色関数の高精度な測定を可能にする新しいタイプの等色関数測定装置の製作,新規の測定方法を考案し,その精度に関して検証を行う.さらに,多数の被験者を用いて個人の等色関数を測定し,それが標準観測者の等色関数とどの程度異なるか,その等色関数の個人差がどの程度あるのかを明らかにする.本研究から得られる結果は,色覚の個人差に関して定量的に評価する手がかりを与え,カラーマネージメント技術開発のための視覚メカニズムに基づく知見を与えると考えられる. 本研究では,任意のスペクトル分布を有する光を呈示可能な光学系装置を作製し,算術的な方法を用いて等色関数を高精度に推定する方法を検討した,この実験により,個人の等色関数を求めることが可能なこと,個人間で等色関数が異なることが示された.続いて,多数の被験者を用いて等色関数を測定する実験を行い,個人差データの収集を行った.さらに研究で採用した算術的な等色関数推定法の精度を評価するために,等色成立条件にばらつきを加えた検討を行い,耐ノイズ特性の評価を行うとともに,従来の等色関数測定実験で用いられた手法との比較を行った.その結果,本手法はノイズ耐性において劣るものの,熟練した被験者に対しては安定した結果が得られること,等色が成立したかどうかの判断に関しては,従来手法よりも満足度が高いことなどが示された. また,異種メディア間での等色実験を行い,個人の等色関数を考慮した算出した三刺激値により両者で一致するかどうかの検討を行い,色差(色空間内でのユークリッド距離)が小さくなることが示された.
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