研究概要 |
本年度は,まず,調和感が視聴覚素材の印象にどのような影響を与えるのか,視聴覚素材の「意味的調和」と「時間的調和」が「総合的調和」とどのように関係するのかを明確化した.ここでは,視聴覚素材について,「意味的調和」と「時間的調和」が,それぞれ,「合っている」と「合っていない」の4パターンの視聴覚素材を用意して主観的評価実験を行った.実験の結果,視聴覚素材の印象は映像よりも音楽の方が優位に働くことを明らかにした.また,視聴覚素材の「総合的調和」は「意味的調和」と「時間的調和」から推定可能であることを明らかにした. 次に,音楽のビートと映像の動作点を検出し,音楽のビートに合わせるように映像の再生速度を変化させる手法を開発した.音楽と映像を同期再生させることで印象が向上できることを実験的に確認した. さらに,視聴覚素材の同時提示の影響を客観的に明確化するために,視聴覚素材同時提示時の脳波の測定を行った.安静閉眼時,安静開眼時,聴覚素材提示時や視覚素材提示時と比較した結果,視覚素材提示時と視聴覚素材同時提示時を比較すると,視覚野の部位に差が見られ,視聴覚素材同時提示時の方がアルファ波が多くなるという結果が得られた. また,脳の意識状態の違いを脳内の電流のダイナミクスの構造の違いとして把握する目的で脳磁波測定実験を行なった.閉眼安静,開眼計算と開眼安静の3つの意識状態について実験したところ,閉眼安静時は後頭部でアルファ波の活動,開眼計算時は前頭部での活動,開眼安静時はランダムな活動が目立っているという結果が得られた.意識状態が異なれば,活動域領域が異なるため,ダイナミクスの周波数領域もシフトし,ダイナミクスのネットワーク分担が存在するものと考えられる.
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