研究概要 |
複数の学習タスクが逐次的に与えられる問題は,マルチタスク学習と呼ばれる.この学習問題で重要となる能力は,特定タスクで獲得した知識の一部を,それに類似したタスクの学習に利用することで,より少ない学習サンプルで新しいタスクの学習を達成する能力である.これは「知識移転」と呼ばれ,学習タスクおよび学習サンプルが逐次的に与えられる環境では,有効なモデルはまだ提案されていない.本研究では,パターン認識問題への適用を試みるため,新しい学習モデルの構築を行った.2年の研究期間で得られた成果を以下にまとめる. (1)識別器の追加学習,タスク変動の検知,既知・未知タスクの識別,タスク分類,知識転送の機能を有する逐次マルチタスク・パターン認識モデルを開発した.このモデルでは,未知タスクを検知するたびに新しい識別機が自動的に生成される. (2)単一識別器で逐次的に複数タスクを学習できるモデルを開発し,過去に学習したタスクのうち,最も類似度の高いタスクを特定し,その知識を選択的に転送する機能を付加した. (3)機械学習のベンチマークデータを用い,未知タスクに対する上記(1)(2)のモデルの性能を評価した.結果,知識移転機能を導入することにより,高速に提案モデルの汎化能力が向上し,少ない訓練データで高い汎化能力をもつことを示した. (4)パターン認識への適用を行う上で必要となるオンライン特徴抽出アルゴリズムの開発を行った.複数のデータが同時に与えられたとき,それらに対して,一回の計算で固有軸の更新を行える新しい追加学習型主成分分析アルゴリズムを開発した.また,訓練データの中から一次独立となるものを選択し,それを用いて固有空間モデルを更新できる追加学習型カーネル主成分分析アルゴリズムを開発した.
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