研究概要 |
コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの糖鎖(CSs)は網膜神経節細胞の軸索伸長を抑制し、軸索が終脳へ侵入することを妨げる。しかしCSsが軸索伸長に及ぼす直接の効果は区別されておらず、CSsの構造多様性と機能特異性は不明である。研究代表者はポリスチレンビーズの表面にCSs脂質誘導体を吸着させたCSsビーズを作製し、CSsが成長円錐の行動に及ぼす効果を検討するタイムラプス培養実験系を確立した。異なった組成(ユニット含有率)を有する標品を利用してCSs脂質誘導体を合成し、CSsの構造多様性が成長円錐行動に及ぼす機能多様性を検討した。CSをコートしない無処理のポリスチレンビーズとA, C, D, E unitを多く含むCSをそれぞれ結合させたビーズ(A, C, D, E ビーズ)を用いてビーズに遭遇した際の網膜軸索の行動変化を観察した;網膜軸索の行動は、(1) 行動変化をしない場合、(2) ビーズから逃れるように進行方向を変える場合、(3) 後退する場合、の三様式に分類された。これまでの観察で顕著なことは、軸索反応の多様性であった;全ての軸索が特定のビーズに対して全か無かの反応をするというよりも、確率的な反応をした。これは用いられたビーズはユニット含有率の多寡で区別されているが、糖鎖内に含まれるユニットの配列などの高次の多様性をさらに含むため、軸索がこのような高次の多様性を区別する可能性が考えられる。加えて軸索のCSに対する感受性が多様なことを示唆している;しかしながら、軸索は多様性を示しながらも、CSビーズの種類に依存して、行動を変えているようであり、網膜軸索はE ビーズを避ける反応をする割合が大きかった。現在例数を増やした詳細な観察を行っており、CSの直接の作用と構造多様性と機能特異性の関係を明らかにすることが期待される。
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