研究課題
基盤研究(C)
高次脳機能を維持する上で、DNA修復系は極めて重要な生体防御システムの一つと考えられている。一方、DNA修復遺伝子の異常が、精神・神経疾患の直接の病因である事が近年明らかとなり、その病態メカニズムに多くの関心が集まりつつある。今回我々は、初代培養ニューロンならびにハンチントン病モデルマウスを用い、異常ポリグルタミン蛋白質がニューロンの核内にDNA二重鎖切断(DNA double-strand break:DDSB)の蓄積をもたらす事を細胞および個体レベルで明らかにした。また、HMGB1およびDDSB修復蛋白質の遺伝子組換えマウスおよびショウジョウバエを作製し、それぞれハンチントン病モデル動物と交配する事により各遺伝子が病態に与える影響を解析した。その結果、ハンチントン病モデル動物の症状(寿命、細胞死、運動能力など)は、各遺伝子を生体内に過剰発現させる事により有意に改善された。また、核内のDNA二重鎖切断修復酵素活性が異常ポリグルタミン蛋白質との相互作用によって阻害される事を生化学的手法により明らかにした(Qui et al.,(2007)Nature Cell Biol.;Enokido et al.,投稿中)。さらに、加齢に伴うHMGB1の発現変化とDDSB蓄積との関係を調べた結果、ニューロンでは核内のHMGB1が加齢とともに減少し、それに伴いDDSBが蓄積する様子が観察された。一方、アストロサイト核では常に高いHMGB1の発現が維持され、DDSBの蓄積もほとんど観察されなかった(Enokido et al.,(2008)BBRC)。アストロサイトは、ホモシステインなど、DNAダメージをもたらす物質代謝を数多く行っており、それらの毒性から自身を保護するための細胞内機構としてHMGB1が働いているのかもしれない。
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