研究課題
基盤研究(C)
マウス胎児脳(胎生14日)において、Sox6(SRY-related HMG-box6)が脳室周囲に発現していることを免疫組織化学による解析により明らかとした。これらSox6陽性細胞は神経幹・前駆細胞マーカーと知られるNestinやSox2と共局在性を示した。同様に、マウス胎児脊髄においてもSox6は中心幹管周囲に発現していた。これらの知見から、Sox6が神経幹・前駆細胞に発現することが考えられた。そこで、マウス胎児終脳よりニューロスフェアをin vitroで培養したところ、ニューロスフェアにおけるSox6の発現が認められた。神経幹、前駆細胞におけるSox6の機能を解明するために、レトロウィルスを用いてSox6を過剰発現する系を構築した。ニューロスフェアにSox6を過剰発現させたとき、2次ニューロスフェア形成能の亢進が認められるとともに、ニューロンおよびグリア細胞への分化の抑制が観察された。また、Sox6の過剰発現によりニューロスフェアにおける細胞増殖能には変化は認められなかった。これらの実験結果の分子論的基盤を解明するために、種々のシグナル伝達因子の変化を調べたところ、Notchシグナル下流因子として神経幹・前駆細胞の未分化維持に貢献するHes1のSox6による発現亢進がニューロスフェアにおいて観察された。また、アポトーシス抑制シグナル因子として知られるBCL-2の発現亢進や、Aktのリン酸化亢進も観察された。これらの知見により、Sox6が神経幹・前駆細胞のメインテナンスやサバイバル能を亢進させていることが明らかとなった。以上の発見は、Sox6の発現を調節することにより、生体において神経幹・前駆細胞を増殖させることが可能となることを意味し、内在性神経幹・前駆細胞の駆動を基盤とした中枢神経疾患治療に貢献できることを示唆している。
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