研究概要 |
本研究は,DMD-nullマウスを解析することにより,ジストロフィンアイソフォームの生体内での機能やDMDの病態との関連を探ることを目的として行われた。その結果,以下の点が明らかになった。 a)骨格筋・心筋DMD-nullマウスおよびmdxマウスの骨格筋(前脛骨筋および大腿四頭筋)について詳細に解析した結果,1)DMD-nullマウスの方がmdxマウスよりも崩壊した筋繊維の数が多く,また筋崩壊一筋再生のサイクルが高週齢のマウスでも持続していること,2)肥大筋繊維数が有意に増加していることなどが明らかになりジストロフィンアイソフォームと筋再生の関わりが示唆された。 b)神経系における表現型の解析ジストロフィンアイソフォームが最も広範に発現する神経組織では大きな形態的な変化は認められなかった。しかし,詳細な組織学的検索の結果,嗅覚神経に特有なグリア細胞,Olfactory ensheathing cellの基底膜に面した細胞表層側でDp71が発現していること,DMD-nullマウスではフェロモンを受容する感覚神経である鋤鼻神経の束状化(fasciculation)並びに副嗅球への投射に異常があることが判明した。 c)精巣 DMD-nullマウスは雄性不妊であり,精巣および精巣上体を組織学的免疫組織化学的に解析した結果,精子変態過程(spermiogenesis)の異常により正常な精子がほとんど認められないことが判明した。精巣ではジストロフィンアイソフォームDp71が発現していることをRT-PCRで確認した。 以上の結果から,ジストロフィンアイソフォームは,生体内で多彩な生理機能を持っていることが明らかになった。
|