研究課題
基盤研究(C)
心筋の発生張力は伸展とともに増大し、この性質は「筋長効果」と呼ばれている。筋長効果は、心臓の拍出量が拡張期圧に依存するというStarlingの法則の基礎を成す。本研究課題の目的は、筋長効果の分子メカニズムを、収縮蛋白系レベルで解き明かすことである。我々は既に、巨大弾性タンパク質タイチン(コネクチン)の伸展に依存した静止張力が格子間隔を縮小させ、クロスブリッジの形成確率を上昇させることを報告している。今回、筋長効果の制御におけるトロポニン(Tn)の役割について検討した。骨格筋の筋長効果は、心筋のそれに比べて著しく小さい。したがって、Tnが筋長効果の制御に関与しているのであれば、心筋の内因性Tnを骨格筋型Tn(sTn)に置換することによって筋長効果が減弱すると予想される。我々は、従来のTn置換法を大きく発展させ、細胞膜を除去したスキンド心筋の内因性のTnを、外来性Tn(ウサギ骨格筋速筋由来)にほぼ完全に置換することのできる実験系を確立した。その結果、ブタ心室筋のCa感受性が増大し、筋長効果がウサギ骨格筋速筋で得られるものとほぼ同じレベルに減弱した。さらに、sTn置換によって、クロスブリッジの形成速度が上昇した。逆に、ウサギ骨格筋速筋にブタ心室筋由来のTn(cTn)を組み入れると、Ca感受性が低下し、筋長効果がブタ心室筋で得られるものとほぼ同じレベルに増大した。したがって、伸展時、格子間隔の縮小にともなって増加するクロスブリッジの数は、Tnの制御を介した細いフィラメントの状態に依存していると考えられる。すなわち、sTnはcTnに比べて細いフィラメントのon-off平衡を相対的にon側へシフトさせるため、クロスブリッジ形成が促進するが、これは細いフィラメントから乖離している(潜在的に発生することのできる)ミオシン分子の減少をもたらし、筋長効果が減弱すると考えられる。
すべて 2008 2007 2006
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (37件)
Circulation Research 102
ページ: 148-150
Journal of General Physiology 131
ページ: 33-41
ページ: 275-283
ページ: 33-34
Biochemical and Biophysical Research Communications 343
ページ: 1146-1152
デサントスポーツ科学 27(別冊)
ページ: 164-170
Biochemical and Biophysical Research Communicatior 343
Descente Sports Science 27