研究概要 |
近年、遺伝子工学の進歩により,ヒトの疾病をモデル化した種々の疾患モデル動物が作成されている.疾病の克服に向けて,これらの疾患モデル動物を用い,疾患の進展過程の究明,診断,治療法の開発が活発に行われようとしている.病態の評価技術には,in vivoで観測可能な画像工学的手法が極めて有用である.小動物を対象として,形態診断用にはマイクロX線CTやマイクロMRIが,機能解析(分子イメージング)のためにはマイクロPET,マイクロSPECTが開発されている.CTやMRIなどを用いた形態描画法では,0.1mm以下の高空間分解能を実現することは容易ではあるが,機能画像において空間分解能1mm以下を達成することは,現行の撮像モダリティでは原理的に非常に難しい.一方,早期の病変を捉えるためには,機能情報を評価することが不可欠であり,機能情報を高空間分解能で可視化できる技術の確立那重要になる.蛍光X線分析は,物質固有の特性X線に着目した物理的に最も高感度な微量元素の検出法で,放射光の直線偏向特性を用いることにより,従来のX線管を用いた手法よりさらに微量な元素を検出できる.この特性に注目し,蛍光X線を利用した,小動物用の高空間分解能かつ高感度な機能断層イメージング法(Fluorescent X-ray CT: FXCT)を開発することを目指した. これまでに,1つの大口径ゲルマニウム(Ge)半導体検出器を用いて,ホルマリン固定した摘出心臓の脂肪酸代謝や生きたマウスの脳血流などの画像化に成功してきた.しかし,従来の撮像系では,ペンシルビームによるデータ取得,すなわち,第一世代型CT撮像方式による撮像を余儀なくされるため,撮像時間に膨大な時間を要する.この問題を解決するため,シート状の入射ビームを被射体に照射し,多素子検出器アレイで投影データを同時に取得することで並進走査を排除する撮像方式を提案する.KEKにおける物理ファントムおよび生体サンプルを用いた基礎的な実験により,提案した撮像方式の実現可能性を検討した.
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