研究概要 |
ラットの尻尾をつるして後肢を非荷重の状態(後肢懸垂)にすると下腿筋に廃用性萎縮が起こる。後肢懸垂中に足関節を最大屈曲位(HSP)またはは最大伸展位(HSD)でギプス固定を行い,ギプス固定を行わない群(HS)と比較すると,速筋成分が多い前脛骨筋では,固定された筋長が長いほど筋萎縮は抑制されたが,遅筋成分が多いヒラメ筋では,筋長が短いHP群の方がH群よりも筋萎縮の程度が軽減されていた。これは筋萎縮が筋長だけでなく,別の要素,例えば筋収縮の種類や拮抗筋との相互関係に影響される可能性を示唆している。 筋萎縮に伴うミオシン重鎖アイソフォームの変化を電気泳動で調ベると,後肢懸垂によって,速筋である前脛骨筋ではIIb(速筋型)の割合が低下し,IIxやIIa(幼若型)の割合が増加する。一方,遅筋のヒラメ筋ではI(遅筋型)の割合が低下し,IIa,IIx,IIbが出現し,前脛骨筋ではミオシン重鎖の幼若化,ヒラメ筋ではミオシン重鎖の幼若化と速筋化が起こる。後肢懸垂中に,下腿後面に磁気刺激を与えると,ヒラメ筋ではI型線維の萎縮だけででなく,ミオシン重鎖の幼弱化や速筋化が抑制された。これは筋線維の種類によって筋萎縮のパターンや磁気刺激の効果が異なることを示唆している。 正常な末梢神経では,免疫組織化学的に神経成長因子(NGF)はほとんど観察されないが,損傷を与えると,損傷部付近にNGFの免疫反応が出現する。損傷1〜2日後に,損傷部に磁気刺激を与えると,NGFの免疫反応がさらに増強し,これは線維芽細胞やシュワン細胞の細胞質や基底膜,再生軸索内の小胞膜に沿って観察される。神経再生に対する磁気刺激の促進効果との関係をさらに追跡中である。
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