研究概要 |
褥瘡は進行につれて治癒にかかる時間, 労力, 費用いずれも増加する傾向にあるため,リスク評価・予防・早期発見処置が極めて重要である. そのため, 近年, 予防目的の体圧分散マットレス, 圧力・ズレ力などの力センサを利用した除荷重などによる褥瘡対策が盛んである. しかし, 骨格・筋・皮下組織の構造および物理的特性, 寝具の物理的性状や就寝環境, 栄養状態, 介護実施状況などは個人差が極めて大きいため, 一律の予防効果は期待できない. したがって, その介護は試行錯誤的にならざるを得ず, とくに家族による家庭介護では負担が大きな問題となる. これに対して本研究では, 褥瘡が発生・進行する皮膚・皮下組織そのものを生体電気インピーダンス法(BIA法)にて工学的に評価することを試みた. アルコールパッチテストの要領にてヒト前腕に作成した褥瘡モデル組織に対しBIA法により皮膚の電気インピーダンス計測を行うことで, モデル組織の弁別が可能であった. また, 得られたBIA計測データに基づき等価電気回路モデルを開発した. 臨床利用を想定した簡便な電気計測デバイスに関する実験・考察も行った. 本研究を通じて開発を行った計測手法や電気モデルの妥当性に関しては, 今後さらに動物を用いた皮膚加圧実験, 加えて臨床試験などを通じてフィージビリティ評価がなされるべきである.
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