研究概要 |
本研究の第1の目的は,プレッシャーが運動制御に及ぼす影響を調べることであった.また,第2の目的は,プレッシャー下における意識的処理や注意の処理資源不足などの認知的変化ならびに生理的情動反応が運動制御に及ぼす影響を解明することであった.実験1では,大学生24名を実験参加者として,プレッシャーがゴルフパッティング課題に及ぼす影響を調べた.実験2では,大学生30名を実験参加者として,プレッシャーが卓球フォアハンドストローク課題に及ぼす影響を調べた.両実験において,低強度のプレッシャーが実験参加者に負荷された.パフォーマンスの得点はプレッシャーによる影響を受けなかったが,ボールの停止位置やバウンド位置はプレッシャーによって偏向した.また,身体運動ならびに身体運動以外の対象への注意がプレッシャーによって増加した.実験1では,テイクバック期及びフォロースルー期の運動変位の減少ならびにダウンスイング期の運動速度と加速度の減少という運動学的変化が生じた.また,テイクバック期におけるグリップ把持力の増加という運動力学的変化が生じた.そして,注意散漫度が増加した実験参加者ほどインパクト時のクラブヘッドの向きがターゲットに向かって右に偏向し,心拍数の増加という情動反応が生じた実験参加者ほどダウンスイングの速度と加速度を増加させた.実験2では,プレッシャーによって打点が前方に移動し,インパクト時のラケット面がターゲットに向かって左を向いた.さらにフォワードスイング期の運動速度が低下し,ボール速度も低下した.また,注意が増加した実験参加者ほど運動の変動性が増加した,これらのことから,課題によって,プレッシャーが運動制御に及ぼす影響は異なるが,プレッシャー下で生じる認知的変化ならびに情動反応の変化によっても運動制御に生じる変化が異なることが明らかとなった.
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