研究概要 |
高齢者に多い転倒を視野に入れた研究の第一歩として,高齢者のバランス機能が歩行運動の左右動と如何なる関係にあるのかに焦点を当てて研究した.被験者は高齢の男性95名(75.0±7.3歳),女性123名(73.5±7.3歳)と,若年男性58名(20.9±1.0歳),女性68名(20.4±1.5歳)の総数344名であった.2台のビデオカメラを用いて自由歩行における動作を収録し,身体重心の三次元座標分析し,次の結果を得た. 1.足向角(両足間の角度の平均値)は,高齢群の男性が20.8±9.1度,女性が9.6±9.4度,若年群では男性が13.6±7.9度,女性が0.4±7.8度で,足向角の平均値は,男女ともに高齢群のほうが若年群に比して有意に大きく,「高齢者が若年者より外股歩きをする」ことが明らかであった. 2.歩隔の平均値は,高齢群の男性が0.071±0.031m,同女性が0.059±0.044m,若年群では男性が0.071±0.039m,女性が0.066±0.033mで,歩隔には高齢群と若年群の間に男女とも有意差がなく,高齢群の歩隔は若年群と同等であるとみられた.また,歩隔の性差では高齢者にのみ有意な差(男>女)が認められた. 3.高齢群における歩行速度と体力指標には,加齢との間で負の相関がみられ,加齢に伴う体力の低下が示唆された. 以上の結果から,若年群と比較した高齢群の特徴として,基本的(平均的)には足向角の大きい外股歩きであり,特に高齢群の年齢の高い人ほど膝伸筋力やバランス能力が低く,歩隔が広く,歩行速度も遅い傾向にあることが明らかとなった.
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