研究概要 |
本研究の目的は、生体顕微鏡下の骨格筋内微小循環網に沿った血管内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)濃度の異方性を微小NO電極により定量的に測定し、同時に計測する筋微小循環系の血流速度・血管径・wall shear rate(WSR)とNOとの関連を明らかにすることである。2006年度は、生体顕微鏡下でラット骨格筋の細動脈領域において血管径・血流速度・WSRなどの循環諸量と同時にNO・微小電極によるNO濃度を経時的に測定することを目的とした。2007年度は、ラット挙睾筋細動脈網において、第一分岐細動脈(1A)から第四分岐細動脈(4A)までの血管径、血流速度及び細動脈近傍のNO濃度を測定することにより、内皮細胞のNO産生能と骨格筋組織内微小循環網における血管径・血流速度・WSRとの関連を定量的に検討することを目的とした。 細動脈分の血管径(μm)が、1A:124.0±8.7,2A:77.3±4.3,3A:39.7±3.6,4A:26.1±2.1μmへと細くなるとともに、血流速度と血流量は動脈網の上流から下流に向かって有意に低下した。しかし、壁ずり応力は1Aから4Aまで血管径の異なる細動脈で有意な差異が認められなかった。細動脈近傍のNO濃度(nM)は1Aで916.4±121.6,2Aで468.4±62.5,3Aで583.0±131.5,4Aで245.0±138.7であった。血管径が大きく、血流速度の最も速い1A近傍においてNO濃度は有意に高い値を示したが、WSRとの有意な関係は認められなかった。WSRの絶対値そのものよりもWSRの変化率などと血管内皮細胞から遊離されるNO濃度とが関係しているものと考えられる。
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