研究課題
基盤研究(C)
血中アミノ酸濃度の上昇は、タンパク質合成を高めることが知られているが、なかでも分岐鎖アミノ酸であるロイシンはその作用が強い。しかし、細胞内ロイシン濃度の上昇は、分岐鎖アミノ酸代謝の律速酵素であるBranched-chain α-keto acid dehydrogenase(BCKDH)を活性化するため、ロイシン代謝が促進される。すなわち、細胞内ロイシン濃度の上昇はタンパク質合成を促進するが、同時に自らの代謝を高めてしまうため、その効果が制限される可能性が考えられる。そこで本究では、ロイシンによるタンパク質合成促進作用に対するBCKDHの役割を検討した。マウス筋芽細胞由来C2C12に、BCKDH E2サブユニットおよびBCKDH kinaseのsiRNAをトランスフェクションし、BCKDH活性を抑制および亢進させ、ロイシンに対する反応を解析した。その結果、細胞内のBCKDH活性が高い状態では、ロイシンによるタンパク質合成促進シグナルが抑制され、BCKDH活性が低い状態ではロイシンのタンパク質合成シグナルが増強されることが示唆された。次いで、ラット肝臓のBCKDH活性には性差が存在することから、ロイシンのタンパク質合成促進作用とBCKDHとの関連を雌雄ラットで比較検討した。明期後半(8時間絶食群、肝BCKDH活性は雌よりも雄で高い)にロイシンの経口投与を行ったラットの骨格筋では、蒸留水投与群に比して、雄雌ともにタンパク質合成シグナルが約2倍に上昇した。一方、18時間の絶食後(肝BCKDH活性は雄雌ともに低い)にロイシン投与を行ったラットでは、雄の骨格筋のみでタンパク質合成シグナル高まった。以上の結果より、ラット骨格筋におけるロイシン刺激後のタンパク質合成シグナルの相違には、肝臓BCKDH活性の影響は低いことが示唆された。雌雄差の原因として性ホルモンなどの作用が考えられるが、その詳細についてはさらなる検討が必要である。
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Am. J. Physiol. Cell Physiol. 293
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Biochem Biophys Res Commun. 343
ページ: 1244-1250
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