研究課題
基盤研究(C)
運動は骨格筋のインスリン感受性を上昇させるが、どのような運動が有効であるかについては不明である。我々は、ラットに乳酸閾値(LT)程度の低強度長時間水泳(LIS;3時間)、または、140%VO2maxに相当する高強度短時間水泳(HIS;160秒)を負荷して、速筋である滑車上筋におけるインスリン感受性(30μU/mlのインスリン刺激による糖取り込み速度)を測定した。LISならびにHISの両方ともインスリン感受性を安静時に比べて上昇させたが、その効果はLISの方が高かった。このように、インスリン感受性上昇のためには運動量が重要な因子である。さらに、本研究では、ラットにトレッドミルを用いてLT未満の運動強度である9m/分の歩行運動を90分以上負荷したところ、遅筋であるヒラメ筋ではインスリン感受性の顕著な上昇がみられた。しかし、6m/分の超低強度運動の場合、運動時間を360分に延長してもヒラメ筋におけるインスリン感受性の上昇はみられなかった。このように、LT未満の低強度長時間運動によって筋のインスリン感受性は上昇するが、運動効果を得るためには最低限必要な運動強度が存在するようだ。また、本研究では、低強度長時間水泳によって滑車上筋においてSirt1という脱アセチル化酵素のmRNA発現量が増加したが、高強度短時聞水泳はSirt1 mRNA発現量に影響を及ぼさなかった。Sirt1は筋のインスリン感受性を上昇させる可能性が示唆されており、低強度長時間運動による筋のインスリン感受性上昇のメディエータとなる可能性が示唆される。なお、運動によるインスリン感受性上昇は活動筋において局所的に生じるが、低強度長時間運動によるSirt1遺伝子発現増加も筋活動によって局所的に増加する。この点からもSirt1が低強度長時間運動による骨格筋インスリン感受性上昇に関係している可能性が示唆される。
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Metabolism 57
ページ: 749-755
Metabolism. 57
ページ: 749-756