研究概要 |
[目的]水痘ワクチンの接種勧奨による水痘発症状況と経済的効果を検討する。 [方法]18年度の対象は、大阪市内1保育園児250名。18年度は通常勧奨で発症者に調査票を配布し、病状と経済的損失を調査した。発症者12名より調査票を回収した未接種5名、接種3名の重症度に差はなかった。受診費用は平均1,184円、家族看護費用は平均17,129円であった。19年度は大阪市6保育園を2分し、非介入群3保育園425名に通常の勧奨を、接種介入群3保育園428名には接種者の水痘抗体価を接種前後にgpELISA法で測定、抗体陰性者に医師等が出向して予防接種を行った。発症131例のうち、調査票を回収した96例を検討した。 [結果]未接種者の水痘罹患率は介入群19%、非介入群27%であった。未接種者の罹患のRisk ratioは、0.68(95%C.I:0.49-0.95)であった。両群間に休園期間(p=0.01)、最高体温(p=0.02)、発熱期間(p=0.04)、最高発疹数(p=0.00)、看護日数(p=0.00)において有意差がみられた。介入群接種者の抗体陽転率は78.3%であった。抗体陰性者は追加接種により全員陽転化した。接種後罹患者の平均抗体価は全体より低かった。医療費総額に差はなかった(p=0.5667)が、家族看護費用は介入群30,865円、非介入群44,002円と有意差がみられた(p=0.0069)。 [考察]介入群での未接種者の罹患率は低く、集団予防効果があると考えられた。重症度は、介入群で有意に軽度であった。介入群で家族看護費用が有意に減少したのは、軽症化が関与していると思われる。水痘発症防御には十分な液性免疫が必要であると考えられたが、不十分でも軽症化には一定の効果があると思われた。追加接種者が全例陽転化した事実は、今後2回接種を推奨する根拠となり得ると考えられた。
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