研究概要 |
視覚情報は,フルカラーイメージの情報である.生活環境に存在する物体を正確に認識するには,物体の色や形,材質や表面特性などを工学的に測定する必要がある.また,照明や環境(空間)の認識,視対象における人間の知覚(視覚探索時間)など認知面からの追究が重要である. 本研究は,日常生活における色彩情報に影響をおよぼす空間的要因や時間的要因について検討を行った.まずリビングダイニング空間の画像刺激をモニター上に提示し,眼球運動計測を行い,視線分析を行なった.その結果,視線がテーブル→ソファー→壁面の絵画→電気スタンド→ダイニングの順で近隣にある「モノ」を伝わって移動することを確認した.視線は空間の前から後ろへ,空間の周辺から中心へ移動することを明らかにした.モノクローム刺激はカラー刺激に比べて視線の停留点が減少し,停留時間は逆に長くなるなどの傾向を認めた.つぎに,JIS安全色彩に近似の赤,黄,青およびユニバーサルカラーの朱に対応した黄赤に調製した立体刺激(円柱)を作製した.光環境可変型検査装置下で,移動する刺激に対する眼球運動を計測し,視線分析を行なった.その結果,被験者は移動刺激が基準刺激以遠(-)にあるときに両刺激が同位置に見えると応答し,特に青が基準刺激の場合や移動刺激が赤,朱の場合にその傾向が顕著であった.視認誤差は基準刺激が青の場合に大きくなる.逆に青が移動刺激の場合には視認誤差が小さく基準刺激の色彩情報の影響が少ない.視線の停留点時間分析では,補色の関係にある青と黄の組み合わせで視線の停留が長くなる.視認性が低い刺激が移動する際,空間的・時間的要因を注視により補完することなどを示唆した.
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