研究概要 |
紙おむつの快適性保持には、紙おむつ内外の換気を促進して紙おむつ内気候の湿度上昇を防ぐことが重要である。本研究では、吸水した紙おむつから紙おむつ内気候に蒸発し得る水分量を推定し、この水分をおむつ外に放散するための換気量(換気必要量)に基づいた評価方法を提案することである。吸水した試料から自然蒸発する単位面積あたりの水分量と着用時に吸水した液体拡散面積の積を紙おむつ内に蒸発し得る水分量とし,この水分量を放散できる換気必要量を着用時の紙おむつ内絶対湿度と着用環境絶対湿度の差から導いた. トレーサーガスに安価な窒素ガスを用いて着用時の紙おむつ換気量を定流量方式で測定するための条件をノズル数とトレーサーガス送入・サンプリングガス吸引流量について検討した.ノズル数を1対または2対,ガス流量を30〜100mlに調整することにより,新生児、乳幼児、高齢者用の紙おむつの換気量を測定することができた.新生児用3製品,乳幼児用5製品,高齢者用15製品のいずれも吸水量の増加に伴って液体拡散面積は増加し,紙おむつ換気量は減少した.しかし,それらの増加や減少の程度は製品間で異なった.吸水量の増加段階における液体拡散面積と紙おむつ換気量の対応関係に負の相関関係がみられたが,その回帰直線の傾きは製品間で異なった.これらの結果から,紙おむつ換気量は主に液体拡散面積の増加に起因して減少するが,吸水時液体拡散面積や液体拡散面積の増加に対する紙おむつ換気量の減少率は素材の液体拡散特性以外の要因(例えば,デサインなど)にも影響されると示唆された.そこで,換気必要量による評価が必要であると考えられ,実測した衣服換気量/換気必要量比で各製品を評価した.この衣服換気量/換気必要量比は,デザインや素材の異なる紙おむつ製品の総合的な定量評価を可能にし,紙おむつ開発の有益な指標となりうるものと考えられる.
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