研究課題
基盤研究(C)
脂肪細胞が分泌する種々のサイトカイン(アディポサイトカイン)は糖尿病、高血圧、動脈硬化に関与し、その分泌は脂肪細胞の肥大化や分化程度が関わっていると考えられており、前駆細胞から脂肪細胞への分化・成熟過程に関わる細胞内分子メカニズムを探求し、脂肪細胞への分化を抑制する食品因子を探索することは、生活習慣である食生活の改善により、肥満由来の疾病を予防するために重要である。本研究は脂肪細胞の分化・成熟による生理的意義、および食物による脂肪細胞に対する影響を検討するために、ドイツUlm大学で樹立されたヒト前駆脂肪細胞株(SGBS cell)を用いて、ヒトにおける脂肪細胞の分化・成熟過程における遺伝子プロファイルをDNAマイクロアレイで網羅的に探索した。また、食品成分の中で、これまで申請者が手がけてきた多価不飽和脂肪酸(PUFA)の脂肪細胞における作用を検討した。DNAマイクロアレイの結果にから、PUFAは脂肪細胞の分化を抑制するが、成熟した脂肪細胞においてPUFAは細胞の分化マーカー遺伝子にはほとんど変化を与えず、炎症性サイトカインの発現を増加させた。脂肪細胞自体の炎症性サイトカイン分泌は非常に少ないが、このことは重度肥満者においては、食事中のPUFA摂取がインスリン抵抗性や動脈硬化を悪化させる可能性のあることを示唆する。そこでこのようは炎症状態を予防する食品成分を探索する目的で、PUFA(特にアラキドン酸)による脂肪細胞における炎症性サイトカインを低下させる抗酸化作用をもついくつかの食品成分を調べたところ、α-tocopherolやγ-tocotorienol、 resveratrolなどが有効であることがわかった。さらにこの低下作用メカニズムは、抗酸化作用やアラキドン酸由来の炎症性サイトカイン生成のみでは説明がつかず、今後さらに検討が必要であると考えられた。
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