研究概要 |
本研究の目的は,テフラ(火山灰)が乏しい地域の地形・地層の絶対年代決定の手法を確立することである.そのために,四国南東部の段丘を研究対象として,さまざまな年代測定法を複合して,段丘の絶対年代を決定する.高知県田野町周辺には,最終間氷期(約13万年前,酸素同位体ステージ5e)とされる海成段丘が分布するが,テフラ(火山灰)が見いだされないために段丘の絶対年代は求められていない.海成段丘の下には埋没谷を埋める礫層,シルト・砂層があり,それは酸素同位体ステージ6から5eにかけての海面上昇によって堆積したと考えられる.その谷を埋める堆積物にはテフラが挟まれていることが期待される. 本研究では,従来の地形学・地質学的な調査・研究方法に加えて,以下の3点に焦点を置いて研究を進めた. (1)ボーリング掘削による谷を埋める堆積物の連続的な採取.(2)新しい年代測定法の適用:テフラのほかに新しい年代測定法である OSL 年代測定と地磁気エクスカーションの検出をコアに適用し,コア試料に複数の絶対年代目盛りを入れる.(3)物性測定,堆積構造把握,化学分析,微化石分析,貝化石分析を組み合わせた堆積過程の復元. 高知県田野町周辺の海成段丘の下の谷を埋める堆積物の連続的な採取のために,3本のボーリング掘削を行った.しかし,谷を埋める堆積物は1本からしか採取できず,コアにはテフラが挟まれていなかった.そのため,谷を埋める堆積物の年代,その上の段丘の年代を決定することができなかった.古地磁気測定では,コアの試料の安定な磁化成分は一般に下向きの伏角を持つが,約50cmの範囲で地磁気エクスカーションによる可能性がある伏角が上向きのものあるいは下向きだが非常に浅いものが認められた.今後,各種古地磁気・岩石磁気測定を行い,残留磁化の信頼性を確認する必要がある.また,珪藻化石の絶滅種を使えば,コアの年代を推定できる可能性がある.
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