研究概要 |
人間活動を原因とする地球環境の変動は,温暖化だけでなく生態系内の窒素やリンの循環量が大きく変わる時代に突入している.ミミズは土壌の生態系改変者として,落葉分解や土壌の物理性の改変に大きな影響を与えている.ミミズを初めとする土壌生物にとって,気候変動の影響も大きいが,人間活動による窒素降下物や施肥による土壌の窒素やリンの濃度の変化は,これらの元素が野外では不足がちであるため,群集レベルで大きな影響を与える可能性がある.そこで,土壌の窒素,リンと生物のNP利用割合を調べることで,ストイキオメトリーで環境変動の生態系影響を評価することを試みた.野外で密度を操作したミミズ群集と,実験室で窒素の動態を詳しく調べたモデル研究の双方で,土壌中の窒素無機化過程が微生物だけでなく,土壌動物による摂食活動によって大きく変化することを示した.また,野外でのミヤコザサの摘葉は,根からの炭素供給量の変化を通して,細菌,細菌食線虫に影響し,窒素無機量を変えることを明らかにした.次に,ミミズにとって落葉の質が成長速度に大きく影響することを示した.さらに,これまで淡水のプランクトンで明らかにされてきたように,日本の主要なミミズの体のN:Pと,成長速度との間には明瞭な関係があることを明らかにした.すなわち,表層性で1年で生浩史を完了するグループはNP比が小さく,土壌性で生活史が長い種はNPが大きかった.これらのことから,種間競争についてはまだ予測できないが,陸上生態系における窒素とリンの循環量の変化はミミズの群集構造と密接な関係があることが予測できた.
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