研究概要 |
本研究では,岡山県英田郡西粟倉村の小規模個人有林が管理放棄に至ったプロセスを明らかにすることを目的とした.研究期間の成果は下記のとおりである. 1.小規模個人有林における管理放棄の要因分析 所有林管理状況と問題点について聞取りを行った結果,小規模林家では,間伐材需要の多様性の喪失,育林管理技術の未熟さ等により,臨時収入源として成立しなくなったことが管理放棄の大きな要因となっているという特性がみられた.育林ステージ後期では,風倒木被害・獣害等を機に放棄する場合が多く,個人管理の限界が示唆された.また,所有林の財産としての価値は現在ほとんど認識されておらず,場所によっては,将来公共財としての管理が望まれていたが,管理主体は公的機関であるべきとの考えが示唆された. 2.森林の利用履歴からみた個人有林の分布特性 森林の所有と利用の変遷を整理し,個人有林の立地特性を明らかにした結果,現在の個人有林は,薪炭林や採草地といった,かつての土地利用が立地特性に反映されていた.そのため,必ずしも人工林の育林に適しているとは限らず,管理放棄の一因にもなっていることが示唆された. 3.よそ者導入による森林管理の可能性 今後の森林管理の担い手として,Iターン者やボランティアが活躍する可能性について聞取りを行った.その結果,村での生活が長く,山仕事の豊富な林家はよそ者による森林管理に否定的だが,村での生活が短く,定年になって山仕事をはじめたUターン者は好意的であることがわかった.このことより,Uターン者が村とよそ者の仲介者になる可能性が示唆された.
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