研究課題
基盤研究(C)
反応性スパッタ法でTiO_2単層膜を形成し、その光触媒活性を利用して、水中環境ホルモン、特に代表的な女性ホルモンである17βエストラジオール溶液の分解実験を行った。溶液中に浸したTiO_2薄膜に紫外線を照射しながら、高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)を用いて、17βエストラジオールのピーク高さから分解の度合いを評価した。紫外線が強い方が、照射時間が短いほど分解量は多くなるが、6時間後では、強度に関係なくほぼ飽和値に達した。薄膜形成条件であるスパッタガス圧の違いにより、分解量に違いが生じたが、これは膜の表面積や緻密さの違いによると考えている。TiO_2単層膜の可視光応答性を改善するために、WO_3膜を下地層とするTiO_2/WO_3二層膜を形成した。WO_3膜は高純度WターゲットをArとO_2の混合ガス中でスパッタすることで形成された。WO_3膜は基板を加熱しない状態で形成されるので、アモルファスに近い状態を示した。そこで、アニール処理を施した結果、XRDの測定から結晶性が著しく改善され、透過率の吸収端も可視光の長波長側にシフトし、AFMの観察からも、Rmsの値が大きくなり、表面微細構造も大きく変化した。アニール処理されたWO_3膜上にTiO_2膜をスパッタ法で形成させ、TiO_2/WO_3二層膜を作製した。人工太陽光を照射しながらTiO_2単層膜と同じ方法で17βエストラジオールの分解実験を行い、二層化が光活性に及ぼす影響を調べた。TiO_2/WO_3二層膜の方が、TiO_2単層膜の場合よりも、分解効率が向上し、共に、最初の量と6時間後のそれと比較すると、TiO_2/WO_3二層膜では約57%、TiO_2単層膜では約45%の量が分解された。このことにより、下地層のWO_3膜が太陽光中の可視光を有効に吸収しており、これによってTiO_2単層膜の光活性がより改善されることが明らかにされた。
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