研究概要 |
光や電子集積回路等の微細パターン露光工程において,パターンの微細化の要求に伴って露光装置に使用される光の波長は短くなり,蛍石を用いる光学系が必須とされている。光学素子には表面に微細パターン構造を有するものが考えられるが,加工方法としてはドライエッチングが使用される。しかし,蛍石を光学素子とする場合には,化学的エッチングモードを発現するエッチングガスが存在しないためエッチングを行うことができず,微細パターンを有する光学素子を蛍石で形成することが非常に困難であった。本研究はこのような問題の克服のために計画されたもので,蛍石の表面を反応性イオンエッチングで加工して光学素子等を製作する方法の開発のための基礎研究およびこのプロセス技術を開発することにある。18年度はOHの利用に着目した実験を行い,誘導結合型(ICP)の液体ソースH_2Oプラズマについて明らかにした。 19年度は,固体ソース(氷)を用いたH_2Oプラズマの生成と,CaF_2のドライエッチングプロセスへの応用を試みた。高周波電極の対向電極の代わりに石英板を配置し,SmCoリング型磁石を設置し高密度プラズマを発生させた。試料には光学研磨された直径1cm,厚さ1mmのCaF_2結晶を用いた。H_2Oはプロセスチャンバー内に設置されたビーカー内の水を,チャンバーを真空にする際の気化熱で凍らせることにより固体ソース(氷)とした。気体のH_2Oはこの氷から昇華することによってチャンバー内に供給される。CaF_2のエッチング深さの高周波パワー依存性を調査した結果,CaF_2のエッチングには,Siのトレーが有効であることがわかった。約2μmエッチングした試料のエッチング面はRaで約1nmの粗さであり,透明性もエッチング前と同様と良好な結果であり,光学デバイスへの応用に際して十分な特性をもつことが実証できた。本研究で得られたプロセス技術は,蛍石の回折格子やフレネルレンズなどの光学デバイス製作のほか,OHによる紫外光源や殺菌への応用も考えられる。
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