研究概要 |
「マネー経済」と呼ばれる今日,企業にとって如何に収益性を向上させるかがその企業価値を高めるという意味でも重要な課題である.本研究では,科学的な収益管理方法の確立に貢献することを意図して,現実に存在する問題の分析と,ミクロ経済学,産業組織論,オペレーションズ・リサーチをはじめとする様々な分野での文献調査の両方を同時並行して行った.その結果,先ずはじめに,現実のビジネスの世界に消耗品ビジネスにおける価格設定に関する問題が存在することを明らかにした.これに対しては,その理論的裏付けが希薄であることから,ゲーム理論によるアプローチを用いることで,消耗品ビジネスの価格戦略を説明可能とした.その代表例は,システム本体を安価に,消耗品を高価に設定することで収益性を高めるビジネスである. 次に,小売業における特別展示商品に注目し,その商品特性を考慮した上で,卸売り-小売り間に協力が存在するか否かによって両者の収益性が異なり,協力によって収益性を向上させることできることを示した. またドルゲームと呼ばれる単純なゲームにマルチエージェントを適用することで,為替相場における消費者の行動を説明することも試みた. 一方,収益管理には直接関係はしないものの,現実の生産過程においては,当初の計画通りに生産工程が進捗することはまずなく,計画の調整,修正が随所に必要となる.このとき,計画の調整や修正を行うための判断基準として注目すべき指標は明確にされていない.本研究では,タスクの累積遅延とそれぞれのジョブの遅れの関係に注目し,タスクの累積遅延を判断基準とするスケジュール修正を提案し,良好な結果が得られることを示した.本研究成果は,生産コストの低減を図るという意味で収益性向上に貢献すると考えられる.
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