研究概要 |
1本研究は,阿蘇火山中岳の有史の火山災害を明らかにするための「古坊中遺跡」の発掘調査を二次(二年)にわたって行ったものであり,以下の成果を得た. (1)火山灰層の識別:7地点において,発掘調査を行い,ほぼすべての地点で同様な火山灰層が観察され,ほぼすての地点で火山灰層の対比が可能であった.それらの中で15層の鍵層が認定され,これらのうち11層については,古坊中遺跡推定範囲のほぼ全域に分布することが推定された.それらの火山灰層の存在と対比から,埋没遺物や遺構の層準をほぼ正確にきめることができた. (2)火山灰層から判明した火山活動の特徴:古坊中遺跡より上位(新しい)の火山灰は,さらに上下2層に大別され,下位ではマグマ水蒸気爆発や水蒸気爆発による爆発的な噴火による堆積物が顕蓍で,上位は火山灰を出する穏やかな灰噴火の特徴が認められた.また,遺跡出土層準より上位から,水蒸気爆発など爆発的な活動が目立った. (3)出土遺物や遺構:発掘地点からは,木製品,土師器片,瓦器片,明代の染付皿,土塁や赤色化した礫,木炭や生活面,青磁などが検出された. (4)出土遺物などの年代:遺物,遺構の出土層に関連した炭化物,木片および土壤から,およそ1400年代前半から1700年代にわたる炭素14年代が得られた. (5)古文書の解読:古文書から古坊中が放棄されたころに水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発が起こっていたことが読み取れた. (6)中岳の火山活動:湯だまりからの火山灰の噴出という新しい様式の噴火が認められた.また,中岳の噴火様式には湯だまりの水や多量の地下水の存在が重要であることを明らかにした.
|