研究概要 |
フグ毒テトロドトキシン(TTX)の食物連鎖機構と生合成研究に必要不可欠な安定同位体で標識されたTTX類縁体を合成することが目的である。TTXの生合成前駆体として最も可能性が高い5-deoxyTTXと5,6,11-trideoxyTTXを効率よくかつ確実に合成するために、以下のように研究を進めた。初年度、5-deoxyTTXと5,6,11-trideoxyTTXの合成に必要な11位水酸基の導入された「新共通中間体」の100gスケールでの大量合成に成功した。次年度、5-deoxyTTXを目指して、重要中間体であるラクトンを合成した。すなわちトリクロロアセトアミドの隣接基関与を活用して8位水酸基を導入し、酸化還元によってTTX合成に必要な立体配置に反転させた。ついで、環内オレフィンの立体選択的なエポキシ化、末端オレフィンのオゾン酸化によってアルデヒドに変換した。アルデヒドへのカルボン酸等価体としてアセチレンの導入は、リチウムアセチリドを使うと立体選択的に進行し、保護基の変換後、ルテニウム酸化によってアセチレンを切断しカルボン酸を発生させると、分子内のエポキシドを位置選択的に開環しラクトン中間体が効率よく得られた。5-deoxyTTXを合成するためには、このラクトン中間体へのグアニジン導入を残すのみとなった。今後、5-deoxyTTXと5,6,11-trideoxyTTXの合成ルートの完成させ、安定同位体(15N,13C)で標識されたTTX類縁体を合成する予定である。
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