研究概要 |
花(植物)も鼻(『香り受容体』)があって,においを嗅いでいる。 われわれは,プロテオミクスの手法を駆使することによって,『香り受容体』に関わっている蛋白質の相互作用の可能性をすべて網羅的に洗い出し,それを基に蛋白質ネットワークを解析した。われわれは『香り受容体』と相互作用する蛋白質群のネットワークを網羅的に解析し,現象を蛋白質ネットワークとして理解することで,発見した『香り受容体』の真の生理的・生化学的意義を明らかにした。 次に,植物の細胞膜を透過した香りの成分がどのように変換されて行くのかを,プレゴンを例に解析した。その結果,プレゴン還元酵素の立体特異性はその酵素だけで決まっているわけではなく,細胞内の他のタンパク質との相互作用によって決定することが明らかになった。 さらに,香り受容体などの中には,細胞膜とα-ヘリックスで結合しているものがあり,その結合様式に関して検討した。細胞膜へもぐりこんでいるペプチドを切り出し,膜とのトポロジーを質量分析と化学修飾法を用いて決定した結果,1)このようなペプチドは膜を貫通していること,2)ペプチドは膜内で上下にゆらいでいること,が明らかになった。この上下にゆらいでいる速度は分オーダーの速度であり,その活性化エネルギーはリポソーム膜からリン脂質1分子が引き抜かれるときの活性化エネルギー(約70kJ/mol)に近い値であった。
|