研究課題
基盤研究(C)
高麗及び日本の章疏目録の整理により、各時代の目録に収録された朝鮮章疏の実数、日本各宗に重用された朝鮮章疏、及び新出の朝鮮章疏を明らかにし、その上で日本各宗諸師章疏の新羅・高麗章疏の引用整理を行い、各宗の新羅・高麗仏教認識を窺った。結果として、三論宗では9世紀の願暁1人が元暁、憬興、勝荘、円測、太賢等の新羅章疏を中国章疏と同様に重用しているが、三論宗全体としては、吉蔵三論学の解釈を旨としているため元暁・太賢章疏以外は注目していなかったことが明らかとなった。法相宗では善珠が中国の基や慧沼章疏に次ぐ2次資料として新羅章疏を肯定的に引くが、善珠以降の法相宗諸師は新羅章疏を批判の対象として捉えていたことが明らかとなった。天台宗では新羅諸師の法華経関係章疏への関心はないが、新羅での密教隆盛という認識と共に天台密教相承系譜上に存する新羅密教僧に対する敬意が窺えること、また新羅で基法相学と異なる玄奘系法相学が隆盛していたと捉えていたことが明らかとなった。真言宗では他宗と比べて新羅章疏の引用が少ないこと、空海入唐時に中国で活躍していた新羅僧がいるにも拘わらず新羅密教僧を黙殺し、その他の新羅章疏にも関心を抱かなかったことが明らかとなった。華嚴宗では8世紀の寿霊が中国章疏と同様に新羅章疏を重用しているものの、寿霊以降は法藏章疏研究が盛んになると共に新羅章疏に対する関心が少なくなっていったことが明らかとなった。また律宗では12世紀末までは新羅章疏の引用が皆無であることが明らかとなった。しかし、華嚴宗、律宗、及び他の日本各宗でも13世紀から戒律研究及び自宗所依経論章疏の再研究が活発となり、それに伴い新羅章疏に対する再評価が行われたことも明らかとなり、日本各宗の朝鮮仏教認識を明確にするためには、13世紀以降の日本章疏研究が必要であることも明らかとなった。
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