研究課題/領域番号 |
18520049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
印度哲学・仏教学
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 龍谷大学, 法学部, 教授 (90198375)
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研究分担者 |
内藤 知康 龍谷大学, 文学部, 教授 (60247814)
杉岡 孝紀 龍谷大学, 文学部, 准教授 (70298727)
岡田 康伸 京都文教大学, 人間学部, 教授 (90068768)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,530千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 330千円)
2007年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2006年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 仏教学 / 親鸞思想 / 月愛三昧 / 無我 / 深い傾聴 / 他力 / 縁起 / 柔らかな人格 / 親鶯理想 / 人間観 / 自我 / 愚者の自覚 / 柔らかい人格 / 仏教 / 心理療法 / ディープリスニング / 阿闍世 / 箱庭療法 / ユング / 親鸞 / 人間理解 |
研究概要 |
仏教と心理療法の一番大切な姿勢は、深い傾聴である。深い傾聴とは、師弟やセラピストとクライエントの言葉をただ聞くのではなくて、相手から伝えられようとする何かより深い意義、うまく言葉で表現しにくいより深い真実を受容することを意味する。 「深い傾聴・聴聞」とは、釈尊の月愛三昧や、縁起の自覚から生まれる慈悲に共通する。「聴」とは、親鸞によれば、「ユリテキク」、すなわち、許されて聞くと説明され、煩悩をかかえた自己が全分に仏に受けいれられ、真実の声を聞くことを表している。また、「聞」とは、(1)慈悲の最上表現としての阿弥陀仏の本願に対するめざめであるとともに、(2)自己の深い闇に対するめざめを意味している。「聞」とは、静かな瞑想のなかで、苦しみの中にある自己が、逆に仏から呼びかけられる経験である。この深い傾聴を通して、苦しみに囚われていた自己が、仏の清浄な光の中で、自己のありのままに気づき、自己があらゆるものと相互に関係しあっていることをめざめる。そしてついには、迷える自己がさまざまな執着から解放された自由で柔らかな人格へと転成されていく。心理療法においても、「深い傾聴」は、セラピストが、相手、クライエントの苦悩をそばで黙って傾聴し、偏りのない分析・評価をおこなう姿勢である。そして同時に、継続的な人間関係を通して、やがて自己と相手との相互理解が確立され、クライエントに思いがけない創造的な変容がもたらされる意義を有している。 深い傾聴・聴聞とは、審判せずにそばによりそう慈悲である。それは、ある種の自己概念にとらわれている状態をもっとやわらかくすることめざし、現実の苦しみのなかで、流動的(フレキシブル)に生きるように支援するものといえるだろう。深い人間理解は、相手に対する分析や評価によってのみもたらされるものではない。自己と相手の底に流れる深いいのちの絆が確立されることによってもたらされる。
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