研究課題
基盤研究(C)
本研究は、モダニズム文学の中心人物として知られるアメリカの詩人Ezra Poundが能から受けた影響と彼のイメージ論及び「抽象」観との関係を明らかにすることで、パウンドの能体験の再評価を試みるものである。この目的に則し、フェノロサの草稿をもとにパウンドが出版した"Noh"or Accomplishment:A Study of the Classical Stage of Japan、パウンドが能をもとに書いた戯曲集Plays Modeled on the Noh、Gaudier-Brzeska:A Memoirをはじめとする評論などを対象にした文献調査を行い、パウンドの能体験とこの時期に育まれた彼の詩論、特にその「抽象」観との関係について検討した。調査の結果、次の知見を得た。(1)パウンドの能解釈、とりわけ、"Noh"or Accomplishmentにおいて繰り返される能の性格付け-能はイメージであり、また、そのイメージは単なる映像ではなく、舞、台詞、謡などによって複合的に形成される抽象的な複合体である--が、同時期にイマジズム運動を展開した彼のイメージ観及び抽象観と連動していること。(2)パウンドの能解釈に見られるイメージ観がThe Cantosの構成原理と考えられる「表意文字的手法」創出の一つのきっかけとなった可能性が認められること。(3)後年パウンドが能を模して書いたWomen of Trachisには作品を抽象的な複合体として提示する主張が乏しいが、このことは1930年代後半から見られるとされる「表意文字的手法」の後退と関連していると考察されること。本研究により、1910年代のパウンドの詩と詩論、とりわけ彼の「抽象」観と「表意文字的手法」の確立において、フェノロサの漢字論など他の要因と並んで、彼の能体験が少なからぬ役割を果たした可能性を明らかにしえたと考える。
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『言語文化』 25
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『英語青年』 153.10
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The Rising Generation 153, 10
『英語生年』 153.10
『英語青年』 153.4
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