研究概要 |
1.『金瓶梅』本文の読解と、話法・引用の用例収集 本研究で最も重要な基礎的作業であり、話法・引用の文体論分析へとつなげる。詞話本を底本に、あわせて崇禎本、張竹披本などの異本を参照した。さらに1993年に始まり、現在第3巻(第60回)まで刊行されている英訳本(David Tod Roy,tr.,The plum in the golden vase,or,Chin Ping Mei,Princeton:Princeton University Press,1993-2006)も参照した。これはきわめて精確な翻訳であるだけでなく、本研究対象である話法・引用が英訳でどのように表現されるかは、ひるがえって原文・中国語の問題を考えるうえできわめて示唆に富むからである。 2.用例の分析 収集した用例を分析するにあたっては、清平山堂刊行の小説を比較対照のために用いることとした。『金瓶梅』が個人創作の長編小説であるのに対して、清平山堂は不特定の作者による短編で、内容も雑多であり、比較に好都合と思われる。さらに、本研究の分析に活かすために、言語学・文体論・文学理論などの最新の研究成果と動向の把握に努めた。 3.文献学的研究 本研究のもう一つの基礎作業として、使用するテキストの文献学的研究を行った。『金瓶梅』だけでなく、比較の対象である清平山堂刊行の小説についても書誌学的調査を行った。 4.成果の報告 国内外の専門家から批判と教示を得ることを主たる目的として、国内学会「九州中国学会」、国際学会「中国古代小説国際研討会」「明代文学与文化国際学術研討会」および台湾での国際シンポジウムで研究成果を報告した。
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