研究概要 |
研究代表者菅野裕臣は2006年秋-冬,2007年秋に,研究協力者は両年夏と秋に主としてウズベキスタンのサマルカンドに滞在し,サマルカンドにおける諸民族の居住の分布と言語状況及びウズベク人とタジク人の言語接触についての基礎的な調査を行った.ウズベキスタン全土の言語の分布についてはかつておおまかには"Etnicheskij atlas Uzbekistana", Tashkent, 2002で論じられているが,細部はそれぞれの地元のロコミで埋めていくしかない.今回サマルカンドでは住民の末端の基礎的半行政的単位としてのマハッラについての情報を得るよう努力した.また研究協力者サファーロフ氏を日本に招いて研究分担者とともに意見の交換を行った.とりあえず次の諸点を明らかにし得た. (1)ウズベク語は音素,語彙の点でタジク語化されたテュルク語であると言われるが,アクセントはウズベク語にしか見られないらしいこと(これに関連して試論を報告書に載せた),文法範疇の分野では細部での対照研究がなく,これの解明は今後に持ち越される.ウズベク語=タジク語話者のウズベク語,タジク語,ロシア語による発話に共通に見られる「Non-pon式畳語」を見いだし,これを報告書で発表した. (2)少数民族はマハッラという単位に比較的よくまとまって住んでいる.たジク人学者によるサマルカンドのマハッラに関する最新の研究を報告書に収めた.何世紀も前に移住してきた民族(アラビア人,イラン人,ユダヤ人,ジプシー等)はタジク語かウズベク語に同化しているが,比較的新しい(19世紀)移住者(テュルクメン人等)はよく言語を保っている.よその土地からの移住者(ロシア人,アルメニア人,朝鮮人等)は概してロシア化の道をたどっているが,農村で集団で住むドゥンガン人は言語をよく保っている.
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