研究課題
基盤研究(C)
生命倫理の分野では早急に法的基準を設定しなければならない問題は数多いが、ドイツの基本法1条の「人間の尊厳」は生命倫理問題に対処する基準として注目されており、本研究は生命倫理の問題に、この概念をあくまで日本の実定憲法上のものとして適用しようとしたものである。またその前提として、「人間の尊厳」と重要な関連を有する日本国憲法13条の「個人の尊重」の理解の深化を図った。その成果が、「『教育を受ける』側と『教育を行う側』の個人」「『博愛』への想像力-個人の尊重-」である。また『ドイツの憲法判例III』では、「人間の尊厳」に関する諸判例の研究を行い、当該概念の理解を深めた。そして「Die Achtung vor dem Individuum und die Wurde des Menschen」では、日本国憲法に文言として存在しない「人間の尊厳」は、憲法13条のほか、18条、36条、25条と密接な関係を有することを確認し、当該概念をそれら全体から解釈として演繹されるものとして位置づけ、これを「公共の福祉」の一内容として機能させるべきことを示した。この一般的な理論枠組みを土台の一つとして、「沈黙する者へのパターナリズム」においては、極めて多くの議論が戦わされている「遺伝子操作」についてその限界を明らかにした。そこでは、日本では「人間の尊厳」は、侵害される主体が特定できしかも人間であることが明らかな場合で「客体定式」が当てはまる時のみ、当該概念を制限規範として用いるべきことを示し、遺伝子操作でこれに当てはまる場合を明らかにした。それ以外の領域では、「個人の尊重」によってその是非を判断すべきであり、しかも遺伝子を選択する親の側ではなく、「生まれ来る子ども達」の方を基軸にすべきことを指摘した。そして遺伝子操作を、意思の表示できない彼らに対するパターナリズムと捉え、これに基づき個々の遺伝子操作の許容範囲について、具体的に明らかにしていった。
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東海法学 41号
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Tokai Law Review No. 41
Rainer Wahl (Hrsg. ), Verfassungsanderung, Verfassungswandel, Verfassungsinterpretation
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Rainer Wahl(Hrsg.), Verfassungsanderung, Verfassungswandel, Verfassungsinterpretation, Dunker&Humblot
別冊ジュリスト 憲法判例百選II[第5版] 187号
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東海法学 36号
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110005664309
Tokai Law Review No. 36