研究課題/領域番号 |
18530043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会法学
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
品田 充儀 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10211955)
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研究分担者 |
田頭 章一 上智大学, 法学部, 教授 (80216803)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
2006年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | アスベスト / 労災補償 / 民事損害賠償訴訟 / アメリカ / イギリス / カナダ / 企業倒産 / 有害物質規制 |
研究概要 |
本年度は、北米での調査を中心に行ってきた。研究の前期においては、カナダ、アメリカにおいて調査を行い、アスベスト規制ならびに訴訟に関わる学者、弁護士、労働安全衛生士などに北米におけるアスベスト問題の現状についてインタビューを行い、一方でいくつかの労災補償局ならびに大学にて、アスベスト規制関連の報告書を入手する等の作業を行った。後半期においては、調査において渉猟した資料を分析する作業を行い、問題の全体像を把握するとともに、研究・執筆にあたっての担当分野を明確にし、同課題について発表できる状態に仕上げていった。 そして、2007年3月19日に立命館のアスベスト問題研究グループ(科学研究費基盤研究(B))に二人とも招聘され、それまでの研究成果について発表を行った。 現在までの研究成果は、以下のとおりである。アスベストの危険性認知については、イギリスが最も早かった。1931年にはアスベスト産業規制規則が制定され、その後も断続的に規制強化策が打ち出されている。これに対し、アメリカの規制はかなり遅れており、その基準もイギリスとの比較においては緩やかなものであった。こうした状況の差がアスベストに関する被害発生にかかる両国の時期の差として現れてくる。アメリカのアスベスト関連訴訟は90年代末からさらに急増し、その総賠償額はもはや天文学的な額となっている。そのうち大きな比率を占める訴訟は、未だ疾患にまでは至っていないものの、アスベストによる身体部位に影響が見られるという労働者等による損害賠償訴訟である。アメリカでは、2000年以降、アスベスト問題を裁判外で解決するための立法案が繰り返し提出されているが、未だ実現には至っていない(以上、主に品田担当)。アメリカにおけるアスベスト被害の民事法的救済には、訴訟手続(クラスアクションを含む)の運用上の対策と倒産手続(再建手続)の利用(連邦倒産法524条(g)に基づく賠償ファンド組成)があった。しかし、本来は相対的性格を持つ訴訟を集団的に運用する(たとえば、ある訴訟の判断をそのまま他の訴訟に利用する)ことは、デュープロセスの観点から問題点も指摘されているし、再建手続における処理も、将来の賠償債権者の保護が十分でないなどの問題点が指摘されている。こうした中、わが国の制度を考える際に参考にされるべきは、大規模訴訟事件における審理方法、集団的事件処理に特化した専門的紛争処理機関の設置、アスベスト関連連企業の倒産への立法的措置への準備、より総合的な賠償・補償システムの構築であろう(以上、主に田頭担当)。
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