研究概要 |
本研究期間の初年度にあたる本年度の業績としては、とりわけ、本研究の基本的な構想を海外の研究者にも効率的に伝えるために英語でまとめた、以下の二つの局面における研究成果が挙げられる。これらにより、現地調査を行ったイギリスや成果発表を行った韓国等の研究者からも、本研究に対する高い評価を受けることができた。 第一は、サイバー法の理論的体系化に関して、日本では1960年代以降の社会の情報化に伴って発展してきた「情報法」という概念-コンセプト-と、主に米国において展開されてきた「サイバー法」概念との間に通底する問題意識や課題の解決手法が見出せることを指摘したうえで、コンピュータ・ネットワークによる情報交換の特性に規定された「サイバー法」という視点から、既存の法が抱える課題等を原理的かつ実践的に検討する意義と重要性を明らかにした(詳細については、研究発表欄の「Cyberlaw」を参照)。 第二に、サイバー法の先端的な個別課題について、本年度は、研究実施計画どおりに、ユビキタス化との関係で喫緊の課題とされているプライバシー・個人情報保護に関する課題に焦点を当てて、判例・法令の分析作業を行った。なかでも、マスメディアによるプライバシー侵害をめぐる裁判例の分析を通じて、プライバシーの保護範囲を明らかにし、プライバシー侵害による不法行為の成否をめぐる判断基準・手法を析出するとともに、インターネットやユビキタス・コンピューティングの利用にかかわる個人情報保護をめぐる将来的な課題についても検討を加えた(詳細は、研究発表欄の「Mass Media and Privacy in Japan : Current Issues, Recent Trends, and Future Challenges for the"Ubiquitous Network Society」を参照)。
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