研究課題
基盤研究(C)
本研究は、トヨタ自動車の海外工場を対象として、いわゆるトヨタ生産方式の国際移転可能性を実証的に明らかにすることである。トヨタ自動車が本格的に海外進出を開始して以降、20年を経過した。この間、生産システムの移転状況は如何なる進化をみせたのか、生産システム移転の時間的な経過を考慮し、移転の容易な要素と困難な要素を識別することを課題とする。本研究は、欧州の工場に限定して調査を行うことにした。具体的には、平成19年度は、トヨタ自動車のイギリス、チェコ、トルコの工場、およびブラッセルの地域統括本社、20年度はフランス工場、およびブラッセルの地域統括本社を訪問した。調査研究を通して明らかになった、トヨタ生産方式の移転可能性に関する暫定的結論は次の通りである。トヨタ自動車は、欧州の工場においてトヨタ生産方式を実施しており、その移転は可能である。トヨタ自動車は、工場設立順に、最新の技術を採用しており、技術移転の進化がみられた。またすべての工場において、いわゆる二本柱の技法(JITと自働化)は共通して導入していた。この技法の側面は移転がより容易である。しかしながら、それら技術を現場で生かすための現場従業員の技能の移転は容易でない。移転に時間と経験が必要なのである。技能形成を促す賃金における査定の実施は訪問した工場で共通に見られた。北米では決して実現できなかった現場作業者への査定が、共通して実現できているのである。作業組織と教育訓練についても、各工場の共通性を指摘できる。技能形成を促す作業組織を構成し、積極的な教育訓練を実施していた。技能形成の水準は、初期あるいは中期にあるといえるが、日本の工場と同じレベルにはなお達していなかった。さらに正確な調査を要するが、生産システムの移転については、暫定的にこの結論を動かせない。
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EU Institute in Japan, Kansai Workshop Programme : New Developments in the European Automobile Industry
ページ: 44-68
EU Irstitute in Japan, Kansai Workshop Programme : New Developments in the European Automobile Industry
経済志林(法政大学経済学会) 第74巻第1・2号
ページ: 203-252
120000993583