研究概要 |
本研究は,資産分布の決定要因として,景気循環およびインフレーションの影響について考え,理論モデルに基づきながら,日本のデータを用いて実証的に分析した. まず,景気循環の影響について,三本の論文を作成した.第一に,産業間の生産性のSpilloverが,産業ごとの生産性の分布をもたらす経路として,R&Dの効果と産業連関による中間投入の効果を識別した「R&Dおよび中間投入を通じた産業間のSpillover:道路資本ストックの生産性効果」である.第二に,家計,企業,政府の保有する金融資産の分布が,景気循環および金融政策によって受ける変動に関する「景気循環と資金循環」である.第三に,子供の人的資本への教育支出が,親の教育・所得・資産にどのように依存しているかについて,「家計における教育支出の決定要因分析-『消費生活に関するパネル調査』個票データを用いて」を書いた. 次に,インフレーションの影響については,インフレーションが経済厚生を高めるというトービン効果に関する“A Note on the Robustness of the Tobin Effect in Incomplete Market",および消費者物価指数・鉱工業生産指数の予測および公表,あるいは物価の安定を第一義的目標に掲げた日本銀行の政策決定会合の公式会見それぞれが,資産価格の変動にもたらす効果について実証した「金融市場との対話-新法下の日本銀行のケース」を作成した.
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