研究概要 |
今回の研究の目的は,企業の競争力の源泉となる組織構成員の知財の本質と,そうした組織的能力の発現を促進する組織的な仕組みの解明である。組織構成員の知的能力の効果的なマネジメントは,組織が直面している問題の本質への,組織構成員による問題解決への積極的な取り組みを促進する。団塊の世代の大量退職の時期を迎えた今日,日本の経営者には,20世紀のわが国の経済成長を支えてきた企業の組織能力を継承し,それらを,これからの日本企業の持続的な発展を根底からサポートする能力へと移行させることが求められている。研究手法として,株式公開企業を中心としてサンプリングされた約4,300社の経営責任者を対象として実施された質問票郵送調査を実施した。検証にあたっては,経営者の資質や,さまざまな情報を共有する組織的な仕組み,そして,組織のインセンティブシステムが企業の業績に与える影響を,統計的に分析する手法を採用した。研究の結果,多くの組織が,組織の知識を共有するために,フェイストゥフェイスのコミュニケーションから,フォーマルな会議,意見交換会,あるいは人事異動といった組織学習を促進する組織の構造を採用していることがわかった。また,情報化が進展したこんにちの経営環境のなかで,コンピュータネットワークは,企業における組織学習の重要な仕組みとして定着していることが裏づけられた。こうした組織的な情報共有の仕組みは,経営コンセプトをはじめとして,組織に蓄積されたきた知識,ノウハウを組織構成員によって共有するだけではなく,新たな知識の創発を支援するシステムとしても有効に機能していることが明らかとなった。
|