研究課題
基盤研究(C)
本研究の主な目的は、水産物に導入されているトレーサビリティ・システムの事例を整理することである。また、そのシステムが水産物のブランド化に、どの程度貢献しているのかを明確にすることである。まず、水産物に導入されているトレーサビリティ・システムと水産物のブランド化について、現状と問題点を把握するために、漁協を中心にアンケート調査とインタビュー調査を行った。その結果、トレーサビリティ・システムを既に導入している漁協は少なく、先進事例をみて、今後判断するというところが多かった。その理由として、生産者である漁協だけでなく、卸や小売業の連携と協力が必要であり、現状では一部の養殖魚や貝類(カキ・ホタテ)を除いて、大部分がその段階まで至っていないといえる。しかし、トレーサビリティ・システムは、安全性や信頼を得るために必要であるという漁協の意識は強く、ブランド化につながるという意見も多かった。また、ブランド化に必要な要因に関するアンケートでは、鮮度、安全性、供給量の確保など17項目を設けて尋ねた。その結果、鮮度や安全性については、当然ながら必要という結果が出た。しかし、高価格や希少性については、漁業者の意見は分かれた。さらに、因子分析の結果、識別因子、基礎的因子、差別化因子、組織化因子、高価格因子、物語因子の6つの因子を抽出した。最後に、水産物のブランド化に関しては、消費者、商業者により、受け取り方が異なると考えられる。特に、消費者のブランドに対する意識は、水産物の売上高に関係が深いと考えられるので、今後は、消費者、商業者の意識を調査し、漁業者の意識との比較研究を行いたい。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
大分大学経済論集 60
ページ: 101-123
120001698501
Oita University Economic Review Vol. 60, No. 4・5