研究概要 |
本研究は,企業のコーポレート・ガバナンス形態が経営者の会計情報開示政策および企業業績にどのような影響を与えているかについて,理論的かつ実証的に明らかにしようとするものである.この目的のため,平成19年度では,平成18年度に行われた福島県内の製造業企業に対するアンケート調査結果を再集計するとともにより詳細な分析を行い,経営者行動に影響を与える要因を抽出した.その結果,中小規模の製造業企業において自社の持つ技術的要因のみならず,資金調達可能性や人材の確保および内部組織形態のあり方など,財務的要因や組織的要因が経営者の事業拡大意欲に影響を与えていることが明らかになった.これによりコーポレート・ガバナンス・システムと企業業績とが関連しうることを示す重要な証左を得た.これらの成果は,「産学連携の新たな方向性」奥本英樹著,高崎経済大学経済学部監修『新地場産業への産学官からの挑戦』,日本経済評論社,pp.83-104, 2007年において発表されている. また,19年度ではコーポレート・ガバナンス・システムおよび企業財務報告システムにおいて,その充実がいまだ図られていないと考えられる建設業企業に着目し,それらのシステムの確立度合いやそれらに対する経営者の意識等と企業業績との関連を分析した.当該分析では,福島県に存在する15社の建設業企業に対してヒアリング調査を行った.この研究によって,コーポレート・ガバナンス・システムや財務報告システム等の確立度合いおよびそれらに対する経営者の意識が,企業業績のみならず経営行動にも大きな影響を与えていることが明らかになった.この成果については,「福島県建設業界の現状と課題」奥本英樹著,『地域創造』第20巻第1号,福島大学地域創造支援センター,pp.16-24, 2008年において発表されている.
|