研究概要 |
本研究の目的は,全国の自治体が導入を進めつつある行政評価と呼ばれる業績管理システムについて,管理会計の視点からその実態や問題点を把握し,検討することにあった。18年度には文献調査と事例調査を行ない,平成19年度においては,全国自治体を対象とした質問票調査を行った。 文献調査では,自治体における行政評価普及の過程で,先進自治体と研究者たちが,アングロサクソン系諸国で1980年代以降取組まれてきたNPMの影響を大きく受けたことがわかった。わが国においてもArt(芸術)の性格が強いマネジメントシステムが政策科学分野に持ち込まれていた。結果として,行政評価は,その客観性,論理的な頑健性は弱く,合理性,納得性において自治体現場において様々な問題を引き起こしていることが事例調査によっても明らかになった。実態調査では,全国851自治体に対して質問票を送付し,559の自治体から回答を得た(回答率65.7%)。調査の結果,事務事業評価では,すでに見直しがはじまっていることが本調査で初めて明らかになった。また,仮説検証分析では,行政評価情報の活用成果を上げるうえでは,導入サポートやリーダーシップが重要であり,これらの取り組みが組織風土にも影響を及ぼしていることが明かになった。経済的なインセンティブを働かせるのが難しい行政組織にあっても,行政評価というツールを使って職員のコミュニケーションややる気に影響を及ぼすことが可能であるとのインプリケーションを得ることができた。 なお,調査結果は,今秋に刊行予定の著書として広く社会に還元するとともに,博士論文として神戸大学に提出する予定である。その中では,行政組織の業績管理システムのあり方として,行政評価システムを活用した組織業績管理の重要性が主張されている。
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