研究課題/領域番号 |
18530370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 隆三 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80160282)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,930千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 330千円)
2007年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2006年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 社会学 / 文化 / 社会意識 / 消費社会 / 探偵小説 / 都市 / 群集 / 言説 / 文化・社会意識 |
研究概要 |
本研究は、(1)探偵小説のテクストの成立において、大都市のセンセーショナルな消費文化と膨大な群衆の出現という社会性の場の変化が本質的な媒介要因としてはたらいたことを見出し、探偵小説登場の歴史的な過程を明らかにした。(2)探偵小説のテクストの基本構造を分析し、探偵と犯人(殺人者)という二人の登場人物のあいだに構造的な類似性と同時に奇妙な差異からなる「双数性」(duality)の関係を見いだし、テクスト分析のツールとして概念化した。この「双数性」の構造は、探偵と犯人の同型性と同時に非対称性を担保するものであり、探偵小説のテクストを構成する基本的な要素として機能している。 このようなパースペクティヴから探偵小説の歴史を見ると、ふたつの重要な「転回点」があることがわかる。第一の転回点は1920〜30年代の探偵小説の本格化・形式化の時期に当っており、第二の転回点は1980年代の異常犯罪を描いた作品群が人気を得るとともにはじまる。第一の時期は高度な消費社会が成立しはじめたときで、近代的な主体の意識が自我=アイデンティティの不安の念に駆られ、それが探偵雄小説の形式化をもたらしたが、その不安な空洞を埋めるために、人間的な動機の理解に焦点を置くコナン・ドイルの『緋色の研究』型の言説が補填された。第二の時期には人間的な動機の実定性や有効性が消去され、犯人を異様なモンスターとして同定する科学的捜査の微視的な過程に焦点を置く新しいタイプの言説が生み出されるようになった。 このように、本研究による重要な貢献は、探偵小説のテクストの構造的変化と消費社会の論理との相関関係を歴史的に明らかにし、また、これまでの探偵小説の研究や解釈にはみられなかった独自の系譜学的な展望を与えたことにある。
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