研究課題
基盤研究(C)
問題:本研究はフランスのブルターニュを事例として、グローバル化社会における西欧の歴史的地域が現在どのようにマイノリティ意識を変容させてきているかを考えることを目的とする。ケルトの遺産やフランス支配文化への抵抗で知られるブルターニュでは、1960-70年代には知識人・学生などを主体とする地域主義が発展したが、それは「エスニック・リバイバル」「民族主義的nationalitaire」と形容された。1990年代以降に見られる新しい地域主義においては、シヴィックなアイデンティティ、グローバル化の中のマイノリティ連帯を探る傾向への変化が見られるのではないか、という仮説を検証した。研究方法:制度的な変化と行為者側の分析、という2側面から検討した。ブルターニュ(ブレスト市)でアソシエーションの活動に実際に参加するなどしながら参与観察を行い、半構造化インタビューを行った。またブルターニュの例と(特に制度的差異の地域主義への影響について)比較するため、スペインのカタルーニャ(バルセロナ)で聞き取り調査を行った。研究結果:ブルターニュで1990年代後半以降に顕著となるソフトな地域主義においては、従来からの少数民族との連帯に加え、多文化主義を外側と内側に模索する様子が見られたことが指摘できる。従来の地域主義がケルト系民族やフランスの他地域に向かった「横並び」の連帯だったとすれば、現在の動きには移民文化、少数民族文化、アボリジニ文化など、様々な意味で「マイノリティ化された」他者との連帯を強調する言説が顕著となる。現在のブルターニュにおける「領域・共同体への所属」はエスノナショナリズム的志向性を持つものではなく、「反-文化平準主義」「反-単一国民文化主義」という形をとる。以上の点を特に「音楽の革新」と「移民地区の中で見るブルターニュ文化と地域アイデンティティの役割」という2側面に確認することができた。
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