研究概要 |
本研究では,調査(1,2, 3章)および実験(4,5,6, 7章)の両面から,インターネットと攻撃性との関連性について検討を行った。 1章, 2章, 3章では,インターネット上の行動内容と,現実生活における社会性および攻撃性の関係について,ウェブ調査と紙筆式調査の両面から検討を行った。その結果,ウェブログ上での自己客観視,またはオンラインゲーム上での所属感獲得という行動により,現実生活における社会性は促進されることが示された。一方,攻撃的言動や没入的関与,依存的関与などの行動は,現実生活における社会性を抑制し,攻撃性を促進していることが示された。一連の結果より,インターネット利用が及ぼす影響は,インターネット上での行動内容および使用しているツールによって異なることが示唆された。 4章, 5章, 6章では, CMC (computer-mediated communication)が脱抑制的行動(攻撃性,自己開示)に及ぼす効果を検証するため,3つの実験を行った。その結果,対面状況に比べて,CMCは参加者の攻撃性や自己開示を促進することが示された。7章では,CMCにおける匿名性が自己開示に及ぼす効果について,自己の匿名性と他者の匿名性をそれぞれ独立して操作する実験デザインにおいて検討した。その結果,自己の匿名性は相互作用中の不安感を低減するのに対し,他者の匿名性は親密感を抑制し,さらに自己開示の内面性を抑制していた。
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