研究概要 |
1歳半健診を受診した子どもの養育者148名に対して、育児語の使用傾向(人称接尾辞の使用・音の繰り返し)とことばかけについての信念、望ましい子ども像について、質問紙による調査を行った。分析対象となったのは62名であった。人称接尾辞の使用、音の繰り返し傾向とも、ことばかけについての信念における共感的ことばかけ志向の高さと正の相関があった。また、共感的ことばかけ志向は望ましい子ども像における相互協調性志向と正の相関があった。また、音の繰り返し傾向は、ことばかけについての信念における足場作り志向とも正の相関があった。 公共図書館のブックリストにおいて、3歳未満児向けとして推薦されている絵本について、擬人化されている絵本の割合を日米間で比較した。ナースリーライム以外の絵本では、動物、植物、無生物とも日本の絵本の方が米国絵本よりも擬人化されている絵本の割合が高かった。 日米の公共図書館で1年間に貸し出し回数の多かった絵本についても,擬人化された絵本の割合を比較した。動物,植物,無生物ともに日本の絵本の方がアメリカの絵本よりも擬人化されている絵本の割合が高かった。また,動物と植物については,3歳から6歳未満児向けの絵本では,擬人化された絵本の割合に日米間で違いは見られなかったが,3歳未満児向けの絵本では,日本の絵本の方がアメリカの絵本よりも擬人化された絵本の割合が高かった。 日本では,言語的シンボルにおいて,「さん」・「ちゃん」という接尾辞の付与で擬人化がなされており,絵本の絵という画像的シンボルでも擬人化がなされる傾向が高い。これらには,共感性を志向する傾向が関連していると考えられる。これらのシンボルが日本の子どもたちにおける生物概念の形成に及ぼす効果についての含意が議論された。
|