研究概要 |
本研究は,心臓循環器の患者に対して,自律訓練法により自律神経系の機能がどのように回復し調整されるかを,個々の練習中の自律神経系の変動を査定するとによって検討を行うことを大きな目的としていた。今回は,主に多剤の抗不整脈薬およびカテーテルアブレーションに抵抗性の発作性心房細動等の患者を対象とした。また,健常者を対象に,自律訓練法の修得にあわせて、練習中の自律神経機能の変化がどのように起こるのかもあわせて検討することを目的としていた。 結果は,自律訓練法の練習を実施して約3カ月程度で,不整脈の発作が無くなったかあるいはかなり減少し著効を示した患者が3名'約11ヵ月間実施して著効が認められなかった患者が1名,もともと発作は少なかったため発作についての効果は不明であった患者が1名であった。発作について効果が認められた患者は全員,自律訓練法を毎日定期的に練習し,練習が習慣化し生活の一部になっていた。そして,発作以外にも,生活全般での行動面や心理面での変化や効果も報告されていた。また,発作に対する不安もなくなり,生活上の制約も改善されていた。しかし,個々の指導時の自律神経機能の評価結果からは,練習の進度にあわせた数値の改善は認められなかった。個々の指導時の自律神経機能の評価結果については,7名の健常者を対象とした検討においても,臨床群と同様に,訓練にあわせた体系的な変化は認められなかった。今回のような指導時の自律神経機能指標の比較だけではなく,指導の前後や日常生活での自律神経系の活動性の変化も査定しながら検討していくことが必要と思われた。また,自律訓練法を日常生活の中で定期的に行っていくことのどのような要因が治療上有効であったかを明らかにしていくことが重要であり,より多面的で組織的な介入計画を立てていく必要があると思われた。
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