研究概要 |
本研究は,養育状況に含まれるポジティブな側面とネガティブな側面について親と専門職が一緒に評価して安全な生活を計画するサインズ・オブ・セイフティ・アプローチ(以下SoSA)を用いて,虐待の再発防止のための個別親教育プログラムを開発した.このプログラムは,SoSAの本質を活用する手法「三つの何」「三つの家」「5スペース」「ことばと絵」「家族応援会議」を用いて,「自分を受け入れること」「親子関係性の変化」「社会的なつながりの大切さ」を体験的に学びながら安全な養育を作る機会を親に提供する.養育技術については,セッション間の子どもとの関わりをもとに必要最低限のことを伝える. 本研究ではまず,日本の現場ですぐに使えるような各手法の対話例や活用手順,プログラム実施手順と評価法,家族との関係作りを提案した.次に,研究者,児童相談所及び児童養護施設の研究協力者とのチームが親教育プログラムあるいは親支援プログラムを,関西地区の児童相談所や情緒障害児治療施設の研究協力者が現場で上述の手法を実践した. その結果,以下のような有効性が見出された. 1.視覚化して話し合うことで,親の理解や,親,子ども,援助者,ネットワーク間のコミュニケーションが促進される. 2.親,子ども,援助者の立場から見た事実を多面的に話し合うことで,ゴールやストーリーの共有が可能になる. 3.親や子どもの気持ちや願いに配慮しながら強みに焦点を当てて話し合うことで協働関係ができ,当事者の主体的な取り組みが生まれる. また次のような課題が見出された. 1.親の主体的な取り組みを尊重しつつ,詳細で長期的に実行される安全計画になるように援助者のコントロールを保つこと. 2.親,子ども,家族側のネットワークを巻き込むために不可欠なチーム対応を,忙しい現場で確保すること. 3.対立しがちな初期対応の時期からの導入など,局面に応じた工夫を現場で探求すること.
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