研究概要 |
本研究の目的は、1980年代以降の高校教育改革のインパクトを、各学校の教育活動の組織化のレベルで把握し、改革の意味を改めて検証するところにある。研究は次の2つの段階からなっている。第1段階は,各学校の教育活動の組織化の態様を明らかにする段階であり,第2段階は,教師・生徒にそれがどのような意味をもっていたかを明らかにする段階である。まず,第1段階では,1980年代以降の高校教育改革と高校教育研究の動向をレヴューすることで,各学校における教育活動の組織化とその変化を把握するためのフレームを構築した。すなわち,「類別(classification)」と「枠づけ(framing)」をキー概念として,その両者を弱めることに高校教育改革の特徴があったことを確認した。ただ,平成18年11月に「世界史未履修問題」が社会問題化し、大規模な調査の実施が困難となり、本研究では限られたデータをもとに,教育改革のなかで変化した教育活動の組織化の態様を,学習活動については「教育課程の編成」「生徒の履修」「学修の成果の評価」に焦点を当て,仮説的に明らかにした。同様に生活指導と進路指導についても仮説的な検証を試み,その態様と各学校の属性や教育・経営目標との関連を探求した。次いで,第二段階では,入手可能な実践報告や教務内規,実施可能な生徒調査などをもとに、改革の具体的な現れを教師や生徒の観点からよりインテンシィヴに検討した。その結果,学校の教育活動の「類別」や「枠づけ」は,フォーマルには弱められる傾向にあるものの,必ずしも実効性を伴うものとなっておらず,その点で,部分的に教師や生徒にコンフリクトやアンビバレンスを引き起こすものとなっていることが明らかになった。
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